寒さについて


一日のなかで寒さを感じる瞬間ってわりと決まっていて、当たり前だけど冬だからといって四六時中寒いわけではない。わたしの場合、朝起きてお布団から出る瞬間、一日の終わりに職場のビルを出る瞬間、そして帰りの地下鉄が最寄駅に着いて、その駅の階段を地上へ上がる瞬間。この3つがピンポイントで特に寒い。とりわけ、地下鉄の出入り口の寒さは不可解ですね。なぜあんなに冷たい風があの場所にだけ吹き荒んでいるのか。謎。毎晩毎晩、身を固くしておっかなびっくり上っている階段ですが、そういえば何曜日だったか、先週は一日だけ風を全く感じない日がありました。それはそれで謎。どうしてだったのでしょう。不思議でした。


そうしてピンポイントの寒さについて考えていて気づいたのは、千葉に住んでいたころに感じていた寒さと、今いる都内で感じている寒さとでは、同じ冬のものでも全く別物なんだなあということ。


千葉に住んでいたころ使っていた電車はJRで、本数も都内のそれに比べて少なく、屋外のホームで時には15分も電車を待っていることがあった。それに比べて屋外に出なくてすむ東京メトロのあったかいこと(だから余計に出入り口が寒く感じるわけですが)。あと、転職してから初めて冬を迎えたけれど、前の職場と新しい職場とでは寒さの度合いが全く違う。前職は古い建物の1階の、それも入り口にいちばん近い座席だったために、誰かが出入りする度に冷たい空気にあたっていた。ある年は爪先が霜焼けになり、またある年はホッカイロやレッグウォーマーがかかせなかった。でも今では高層ビルのXX階で働いていて、冷たい風が入ってくることなどまずないし、霜焼けともホッカイロとも無縁、何なら軽く汗ばみながら仕事をしている。ここ一年間で環境ががらっと変わったわけだけど、環境が変わるのに伴って季節に対する感受性や身体性も変わっていったのだ。


千葉にいたときの冬の方が今よりずっと厳しかった。当時、勤めていた職場では、プリンターから吐き出されるA4用紙にさえぬくもりを感じて、ほっとしていたこともあったなあ。そんなことを、たまに懐かしく思い出したりする。