あちらの方はどなた?


一人になったらスカートが聴きたくなったのでiPodで『ストーリー』を再生。
電車のなかでぼんやりしてたら、どこかの駅で振袖姿の女の子たちが乗り込んできた。
卒業式かー。


         


昼すぎ、祖父が入院することになった病院へ、母と向かう。


病院は入った途端ツンとした匂いがして、ああ、病院の匂いだーと思った。
母の後ろにくっついて祖父のいる病室へ。


祖父は母の顔を見て心底ほっとしたようだった。
自分でも「顔を見てほっとした」って言ってたし、
何より母と話しているうちに表情がやわらかくなっていくのがわかったので。
祖父は、時計もカレンダーもない病室で、自分がどこにいて今日が何日なのか、
まったくわからずに二日間を過ごしていたみたい。


娘のわたしが言うのもなんだが、
「○○は××しといたから大丈夫よ、△△のことは心配ないから〜」云々
ハキハキと祖父に話す母は、ほんとにしっかりものなんだなーって、
なんだか感心させられてしまった。


祖父は母の方ばかりずっと見ていて、わたしはまるでそこにいないみたいだった。
(きっとわたしだってわかってないんだろうなぁ)
(どうしよう、このまま一言も話さずに面会を終えるのだろうか・・・)


そしたらふいに、
「あちらの方はどなた?」ってわたしの方を指しながら言い出したから
「えみだよー」って言ったら「えみかー!」って驚いていた。
介護関係の女の子だと思われていたらしい。
祖父と顔を合わせるのは去年の6月以来だったから、無理もないなあと思う。


すまなそうに「悪かったな」って言うもんだから
「こちらこそ。ずっと顔も見せずにごめんね」って言ったら
祖父は少し泣いて、それを見てたらわたしも目がうるんでしまった。


ほんの20分くらいだったけど、会いに行ってよかったと思う。
病室を出るときに「じゃあね」って手をあげたら、祖父も小さくあげ返してくれた。